Kaseo: Japanese Circuit Bender
Kaseo presents
「PUMP UP THE GAIN!!! vol.2」
2013年5月22日(水)@spazio rita
http://www.spazio-rita.com/
名古屋市中区栄5丁目26ー39 GS栄ビル B1F
OPEN 19:30/START 20:00
1,500円+1D 500円
伝説のイベントがついに復活!蛍光灯を使用した“音具”オプトロンを引っさげてあの伊東篤宏が今回、名古屋に上陸!ショーケース形式でお送りするノイズイベント!
オマエノ ゲインガ フリキレル!
Live Act: 伊東篤宏/平尾義之/VVDBLK+MBTK/Kaseo
[bEnt or diE?] presents
Kaseotone / Kaseo
original released on 10 Oct. 2005
Full Download (121MB)
including 40 MP3 files, cover jpeg, liner notes text
『ピロプリ、ポインポイン』
西暦2555年、この年の夏はピロプリ博士が宇宙誕生の根源的な法則「ピロパット理論」を証明した年だ。
死人を葬る儀式、「脳葬」が市民に浸透してから何年になるだろうか。夥しい数の人間の脳みそが、地下4000メートルにある冷凍墓地の墓石の下に冷凍保管されている。よく考えたらとても奇妙だが、習慣とはそんなぞっとするような感覚を麻痺させてしまう。私はこの年の夏も、祖母の墓参りにここへ来た。23分のエレベータを下りながら防寒具を着る。真夏といえども、真冬のようにとても寒いからだ。
子供の頃、夏にもかかわらず動きにくい防寒具を無理やり着せられるのが嫌で、母をいつも困らせていた。「風邪を引いたらどうするの?昔みたいに地上で汗をかきながらお墓参りに行ってたほうがまだ安心できるわ。」と帰りのエレベーターで母が注意するのを聞いては、「じゃあばぁちゃんを地上に連れて行ってあげようよ」とせがんだものだった。あれは今思えば、私はただ退屈な墓参りを、厚ぼったい防寒着無しで楽しく過ごしたかっただけなのだ。
そんな事を思い出しつつ、祖母に花と水をお供えし、手を合わせた。吐く白い息が線香の煙の中に混ざって消える。帰ろうとした時、突然後ろからある老人が話しかけてきた。小柄な体に大きな口と大きなサングラスと眉まで被った毛糸の大きなニット帽。たまにサングラスの奥から見える眠そうな眼をこちらに向けて、何も言わずにブカブカの裾から出た小さな腕を前に突き出し、一枚のボロボロの書面を見せた。そして、老人とは思えないものすごいスピードで一気に話し始めた。
「あんたの祖母の母の母の母の母の母の母の母と、ワシの父の父の父の父の父の父の父がその昔かわした契約書がこれでな、あんたの祖母の母の母の母の母の母の母の母が死亡して脳が冷凍保管されたあとな、ワシの父の父の父の父の父の父の父が行う蘇生実験に協力するちゅう内容でな。で更にな、もしワシの父の父の父の父の父の父の父が死亡するまでに実験がかなわなけりゃあ、それをワシの父の父の父の父の父の父の父の息子、つまりワシの父の父の父の父の父の父に託すちゅう契約の内容じゃ。で、これが次にこうなるんじゃが」
こういうボケ老人もいるもんだよな。迷子になったんだろうか?対応に困る。呆然としていたら、彼はムの字の口で微笑みながら更にもう6枚の契約書を私に見せ、説明を続けた。
「ワシの父の父の父の父の父の父が生きとった間にも蘇生技術は誕生せんかったんで、父の父の父の父の父の父とあんたの祖母の母の母の母の母の母の母の間で新しい契約が結ばれてな、えー、要約するとな、つまりワシとあんたの祖母の契約書がこれなんじゃ。」
ボケ老人のわりにはしっかりした口調なので少し怖くなった。最後に見せられた契約書には、確かに祖母のサインがあり、その横に「茜ピロプリ」とサインしてあった。そして丁寧に私に会釈し名刺を渡された。何も理解できなかったが、これが私とピロプリ博士の出会いだった。
博士は、この祖母の墓石の下の祖母の、そのまた下の一番下に眠る私の祖先の脳を蘇生させる実験の許可を貰いたかったのだ。法律では本人の同意書が必要らしい。
脳蘇生は誰もが不可能だと思っていた。というより忘れ去られていた。脳の冷凍保存の技術が開発されて500年以上経つが、未だに脳の蘇生技術は完成の見込みすらなかった。脳を冷凍保存するという行為は、いつの間にか人を弔う儀式「脳葬」へと変わっていた。そしてそれを不思議だと思う人間はほとんどおらず、当たり前になっていた。
一時間とちょっとだが、話をきき質問を繰り返しているうちに博士の世界に引き込まれて、いろんな想像をしていた。半信半疑のままだったが、私は蘇生の話よりもこの老人の祖先と私の祖先が500年以上もずっと繋がっていたという、嘘でもいいからなんだかロマンティックな世界にできるだけ長く留まっていたかっただけだった。そしていつの間にか、何故か私は次の日博士の研究所に行き蘇生実験に立ち会うことになっていた。
次の日、博士の研究室に行った。深いエレベーターを下りて案内された先には、想像していたものとは全く違う、あの墓地とは対照的な狭い狭い4畳ほどの空間があった。そこはほとんど何も物が置かれていない。そして一人暮らしをする気にもなれないほどの狭さ。変な研究室だ。目の前にある水槽。その中の溶液に黒い玉葱型の装置が浸っている。3本のLANケーブルがその上部に接続され、上に吊るされていた。
「これワシが開発した蘇生装置でな、ポインポインじゃよ。」
私の不安をよそに、博士は大きな白い歯を見せニッコリしながら私に説明した。
「難しい話は置いといてな、私も興奮しとるからな、何せ人間では初めてじゃからね!簡単に言うとな、君の祖先の徹子さんをな、徹子さんを蘇らせる。でも徹子さんには本来出力装置として備わっていた体がない。口すら無いから生きているのかどうかすら確認できん。そこでワシは、脳が筋肉へ命令を送る部位のみに焦点をあてたんじゃ。信号が筋肉へと伝達されるその先に、このポインポインを繋いでおる。ただこれだけでは問題があってな、脳はまず信号が入ってこんと何も出さんのじゃ。胎児のように眠っておるんじゃが起こすためには出産のときと同じ経験をさせてやらんといかんのじゃ。そのあとは記憶が徐々に蘇るのを待つだけじゃがの。」
出産の経験?何を言ってるのかまるでよくわからない。不安でいっぱいだ。本当にこの爺さんは大丈夫なの?やっぱりそうとうイカれたボケ老人なんじゃないのか?私はいつもの癖で、爪を噛みはじめていた。
「言い忘れとったな、徹子さんの脳はこのポインポインの中で眠っとる。ポインポインは、徹子さんの母親の代わりなんじゃ。このボタンを押すと、徹子さんは産まれたてに近い状態になるという訳じゃ。」
急展開だった。質問が口から突いて出る間もない。考えているうちに博士の手はもうボタンを押していた。その瞬間、溶液の中でポインポインはくす玉のようにぱっくり割れ、無数の気泡がポコポコと立ち昇った。
「じき目が覚めるでな。安心せい犬では成功しとるからのう。」
猿では成功していないということだろうか?次第に気泡の数は減り、溶液の中に静かに漂う徹子さんの脳が現われた。私の口はあきっぱなしで乾いてしまい、当分閉まりそうになかった。
「徹子さんの思考はポインポインに一度入ったあと、音として出力されるんじゃ。あとはじっくり耳を傾けるだけじゃ。」
音?オギャーオギャーと泣きだしたりするのかな?博士は何かを確信したみたいで、椅子に座って腕を組み、妙に落ち着き始めた。そして十分ほど徹子さんの方を黙って見ていた。眠りから覚めるのをじっと待っていた。
突然音が鳴った。
何かが飛び散るような激しい音で、私も博士も驚いて背筋が5センチ伸びた。
そのあとブーンと低い音が続いた。
そして次々と音が鳴り出した。ザーザー、バリバリ、ズキュン、ビリビリ、キリキリ、ピロピロピロリ、ドラキリグリギリ、グググッ、スパーーピーーーーーーーンラッ、ドドドドレッキドーーーーーズダダダバンタッタッピピッシャラララーラョーララーラョーラゥッツュッツュッという怒涛のようなノイズ郡に紛れて、断片的なメロディらしきものが聴こえる。
ポインポインが壊れて出た音なのだろう。危険を感じ、部屋から飛び出したくなり、3歩ほど後ずさりした。
「来たね来たね。ふぅ。ここへ座りなさい。」と博士は小声で言った。
「産まれたての赤子のようじゃのう。もうカウントをはじめとるよ。」
博士は相変わらず落ち着きながら、徹子さんを上から吊っているポインポインの表面に埋め込まれた文字盤を指差した。文字盤が3から4になった。
「これは音のパターンを計算しとる。カウントができるだけ長く続けばいいんじゃがな。犬じゃとせいぜい4か5までじゃったが。」
「これが徹子さんの?」
私は初めてまともに口を開いた。
「そうじゃよ。変に聴こえるかもしれんが、まぎれもなく徹子さんが奏でとる。」
「ポインポインが壊れたんじゃないの?」
「はっはっはっは、そう思うのも無理ないわい。ワシもはじめはそう思っとったんじゃからな。はっは」
そう言って博士は白い歯を見せて興奮し、オナラをした。ノイズに紛れて確かに聴こえた。
徹子さんとポインポインの半ば攻撃的な演奏は更に続いた。予測不能のノイズの中にから断片的にメロディが聴こえてくる。でも恐怖心があるのだろうか、すぐ演奏をやめてまたノイズにかわる。ニッコリしていたかと思えば急に泣き止まなくなる赤ちゃんのように。
実に変な感覚を感じていた。
文字盤のカウントは19から20になった。
私の中で何かが起きていた。散りばめられたすべての音は、私の耳のツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨を通って三半規管へ移動し、脳に入り大脳新皮質まで到達する。それから星と星を結んで星座を描くように、音の粒たちが繋ぎ合わされ、そのシーケンスは変形し映像として組み立てられていく。そして、私は見た。はっきりと鮮やかな茶色の樫の木が成長していくのを。まるで夢の中にいるようだった。何故かとても懐かしかった。
それからはずっと目を閉じて聴いていた。頭の中で樫の木がゆっくり揺れ続け、陽に枝をからませながら葉を伸ばす。これで成長を終わりにしようなんて思わない。上に伸びるのが飽きたら横に枝を張り、少し疲れたら葉を枯らしてみる。楽しいからいつまでも続く。無数の実を育てながら続く。
そして文字盤が40をカウントしたあと、ノイズが消え、澄んだ優しいメロディだけになった。この時を待ち望んでいたかのように、樫の実は一斉にボツボツと地面に落ち始めた。そして全ての音は止まってしまった。
目を開けた。博士は何も言わず、細い目から静かに涙を流していた。
その日録音された奇跡の音楽は、博士の手によって学会で論文とともに発表され、世界中で話題になった。そのピロパット理論の内容とは簡単に言うとこういうものだった。
『脳の思考は全て音として出力できる。その音のパターンを認識することで、出力されたメッセージを知ることができる。』
私はあの体験のおかげで、その意味が十分に理解できた。だが博士はこれがきっかけで馬鹿にされるようになってしまった。その理論が余りにも大胆に展開されているため、誰にも理解されなかったのだ。
結局、博士は蘇生技術を証明できないままこの世を去った。遺言どおり脳葬ではなく火葬で弔われ、地上墓園で今も眠り続けている。博士が亡くなった2562年からさらに300年経った今、ピロパット理論が発展したおかげで脳蘇生の技術は発展し、解読方法も確立した。そして今私もこうして脳態として目覚め、脳蘇生されている。あの理論がなければ今の私はいないし、事実を伝える手段もなかった。
最後に、徹子さんから出力された40のパターンの音楽は解読技術により「Kaseotone」というアルファベット9文字に変換された。これにどんな意味があるのか未だに知らないが、できれば今度徹子さんにその言葉のことをゆっくり聞いてみようと思う。
黒柳ジロ
[bEnt or diE?] presents
Kaseotone / Kaseo
original released on 10 Oct. 2005
Full Download (121MB)
including 40 MP3 files, cover jpeg, liner notes text
Liner Notes - ピロプリ、ポインポイン/utabi
Produced by Kaseo
All Recorded, Mixed and Engineered by Kaseo
—————————————————————————
電子回路の中を探検しているかのようなノイズ・エレクトロニカサウンド。 これらが全て「おかしな」カシオトーンによって創られているという事実を、我々はどう受け止めるべきでしょうか?
玩具や楽器の中身を弄って不思議な音を奏でさせる「サーキットベンディング」。内部基板をクラックすることで電子ノイズ発生マシンへ大変身!皆様もベンドマスターKaseoによる狂ったカシオトーンの回路探検の旅へどうぞ!
(奥野晃成/DORF - TECHNO PLANS)
—————————————————————————
かわいい変態「ヘンテコ」がたまらなく好き。微分音とノイズとKaseoさんの愛情をたっぷり含むKaseotone。
あたたかいノイズです。 そして私の中で最高にキュートの分類に属する。電子音たちの歌声、鳴き声、話し声です。生きもののような音と戯れたい。
(dacchin’/重マシー puf de goliath)
—————————————————————————
日本製オモチャ改造で世界各地の愛好者から注目が集まり、熱い視線が注がれています!ベントorダイ?と、パンク魂みなぎるアンサーで切り返します!サーキットベンダー2005年代表。そう、それがKaseo!
集中力を研ぎ澄まし過剰なまでの愛情を注ぎ込み、改造困難と思われていたカシオトーンSAシリーズをいとも簡単に奇天烈マシンへと大変貌させるその魔法のようなテクニックは世界中のベンダーズ達を圧倒し驚嘆させました!
そして今ここに、待望の改造カシオトーンによるアルバムをリリース!このチャンス・ミュージックが21世紀型最新ミュージック!オモチャ好きから現代音楽好きにまで対応するサウンド万華鏡。
座して聴くも良し、踊って聴くも良し!
(chesterfield/atom-sphere)
—————————————————————————
Casio and Casiotone are registered trademarks of Casio, Inc.
Casio, Inc. has not recommended, authorized, endorsed, approved of, or licensed Bent Casiotone or this album.
カシオとカシオトーンはカシオの登録商標です。
カシオは改造カシオトーン及びこのアルバムを、推奨、認可、支持、承認もしくは許可しておりません。
Kaseo氏とは、実際にお会いしたのは一度にも関わらず、いくつかの接点や共通項がある。最初の出会いは、そしてこれがいまのところ実際にお会いした唯一の機会なのだが、2010年3月、当時私が所属していたロックバンド「不思議なバレッツ」の主催ライブイベント(注1)に出演いただき(バレッツの他メンバーと旧知の間柄だった)、ソロパフォーマンスと、バレッツのセットへのゲスト参加で演奏していただいた。事前情報としてYouTubeにある限りの動画を拝見し、そのコンセプトとパフォーマンスに「何じゃこのぶっ飛んだ人は!」と共演を楽しみにしていたものだ。
バレッツのセットでは「ううろんち」という曲にピカトロンで加わっていただいたが、曲の中盤でドラムのみをバックにKaseo氏のアドリブソロをフィーチャーするパートを設けた(注2)。バレッツ自体がそうだが、私自身もYMOを初めとするテクノ/ニューウェイヴの影響を受けており、その流れで電子楽器(シンセ/エフェクターetc.)大好き、一方でインプロヴィゼーションという共通項もある。Kaseo氏は岐阜県在住なので、当日お会いしてから簡単な打ち合わせをしただけで本番に臨んだわけだが、氏の手によって“奇声”を上げるピカトロンを聴きながら、バックでドラムを叩きつつ内心ニマニマしていたものだ。短時間の共演ながらいわゆる「手が合う」感触があった。終演後、この模様は「ピ○チュウvs.○ュウ」と名づけられ(注3)、「ぜひまた“対決”しましょう」と誓い合ってその日は別れ、以後SNSなどを通じ交流を続けていただいている。
そのKaseo氏が、このたびニューアルバム「P.S.S.」を発表した。資料には「サーキットベンディング改造したYAMAHA PSS-102の音源のみを使用」とある。音を聴く前にこの情報が入ってきていたこともあり、まずは機材について書いてみたい。PSS-102は、ヤマハのミニ鍵盤電子キーボード「ポータサウンド」シリーズの一機種で、1991年に発売された。自動演奏機能を備え、音色や楽曲の演奏データを「ミュージックカード」に保存することができる。私はドラマーであるが、ミニ鍵盤キーボードには愛着があり、ポータサウンド最初期モデルであるPS-3他、計4台を所有している(注4)。特にPS-3は1980年代前半、まだ学生だった時代に、安価な機材でYMOなどをコピーしていた際、かなり使い倒した。内部の回路にこそ手をつけなかったものの、「疑似モノシンセ奏法」(注5)「ベースコード鳴りっ放し」(注6)究極の裏技「断末魔のディストーション」(注7)など、取扱説明書に書かれていない独自の裏技をいくつか発見・開発した。また、私は回路こそいじらなかったが、友人数人も同機を持っており、うち1人は(音程の)チューニングつまみを表側のパネルに移設する改造を行っていた(注8)。
Kaseo氏のサーキットベンディング活動にも、同じニオイを感じる。氏の一連の活動の原点にも、“電子モノ”(楽器に限らない)が好きで、しかし「既存のものには飽き足らない」「だから思わずいじりたくなってしまう」といった動機、そしてそれを実現してしまった体験と行動力があり、その方向を突き詰めていった結果が、サーキットベンディング活動に結実していると考えられるのだ。そしてそれは今後も発展し続けるのだろう。今回このライナーノーツを書かせていただいたのには、Kaseo氏の活動や音楽への興味関心があったのはもちろんだが、このミニ鍵盤キーボードへの思い入れも大きな動機になっている。自分もポータサウンドをいじくり回したという共感と、Kaseo氏にはさらに先へと突き進んでいただきたいというエールである。
さて、そして新作「P.S.S.」である。一聴したときには「なんだKaseoさんは鍵盤もけっこう弾けるんじゃないですか」と思ったが、その後ご本人のコメントを読んだところ、なんと「オレは一切鍵盤を弾いていない。改造したPSS-102が勝手に奏でた音をそのまま録ってるだけ」(注9)とのこと。これには驚かされた。自動演奏機能が充実しているとはいえ、どこをどう改造したらこんなことが可能なのか。機会があれば詳しい解説を拝聴したいところだが、聴いていただいた方にはおわかりいただけるように、とにかく「音楽的」なのである。フレーズの反復と緩やかな変容を基調としながら、アンサンブルが見事に成立している。もし「勝手に奏でた音を録っただけ」と先に聞いていたとしたら、もっとアバンギャルドでノイジーな音か、もしくはもっとシンプルなミニマルミュージックを想像しただろう。これは、元々PSS-102が優秀なマシンなのか、Kaseo氏の改造技術によるものか、録音後の「選択眼」が素晴らしいのか、おそらくそのすべてであろう。
Kaseo氏自身は「NEU!やCAN、Clusterのアルバムとシャッフルすると違和感なく聴ける」(注10)と書いているが、私は細野晴臣氏の「Coincidental Music」「The Endless Talking」(共に1985)辺りの作風にも近い印象を受けた。当時の細野氏が即興性を志向していたことと(注11)、おそらく使用機材(音源)の製造年が近いことなどが要因となっていると思われる。…そう、Kaseo氏はサーキットベンディングによって、PSS-102を「即興演奏できるマシン」へと改造したのではないか。
この間、就寝時に「P.S.S.」を聴きながらということが何度かあったが、なかなか快適に眠りに就くことができた。不協和音や、リズムの“訛り”も含め、やはり「音楽的」であり「心地よい」のであろう。Kaseo氏自身も「すっごくよく眠れる」(注12)と書いている。熱狂や感動とは無縁かもしれない。心に染み入ったり癒されたりもしないかもしれない。しかし、ちょっとしたデザインが気に入ってふと手に取ったポストカード、あるいは爆発的に売れているとは思えないが妙にクセになってつい飲んでしまうドリンク、そんなようなKaseo氏の音楽を、私は支持する。氏自身も「決して一般ウケするような音楽ではないが、きっとこういうのが好きな人がいると思う」と(注13)書いている。
ビジュアルのデザインについても触れておこう。CD-R版では2枚組それぞれのジャケット(PSS-102の鍵盤とパネル面の写真をデジタル加工したと思われる)の色が、ブルーとオレンジになっている。静的な寒色と動的な暖色であり、2色が補色の関係にあることまでは思い至ったが、「もし意味や由来があれば」とKaseo氏に尋ねたところ、「『モヤっとした音』『ビートを感じる音』の2つにカテゴライズして、WAVファイルのラベル色にブルーとオレンジを使いました。まあ赤でも黒でも何でもよかったんですけど、この2色の組み合わせが好きなもんで」との回答をいただいた。なるほどこれはMacユーザーならニヤリとさせられるし(注14)、合理的な中にも垣間見えるこうしたこだわりが、「演奏はマシンに任せてしまい、しかしそこから何を選び取るかは恣意的」という「P.S.S.」の音楽の制作手法にも通じると思えた。
「P.S.S.」の楽曲は「マシンが勝手に奏でた音楽」だ。しかしこれを聴いていて、「これを耳コピして生楽器で演奏したら楽しいのでは」という、倒錯したアイデアが浮かんでしまった。本当にやったらかなりアホだよなと思いつつも、「P.S.S.」がそうした創作意欲をかき立てられる音楽であることもまた事実なのである。(それにしても「blue_007」の3分43秒〜が、ウルトラマンのカラータイマーの音に聴こえてしょうがない…)
MEW/TOAPP音楽事務所、ドラマー
注:
1)「第1回 不思議のヒットパレード」。2010年3月13日。会場:ラママ(東京・渋谷)。出演:Kaseo、バイナリキッド、フレミングス、不思議なバレッツ。
2)不思議なバレッツのキーボーディストhajime氏の発案による。
3)もちろん某アニメに登場する、ピカルミンやピカトロンに酷似した某キャラクターと、筆者の名前と同じ発音の某キャラクターに因む。
4)以下の4台。ヤマハPS-3:1980年発売。ポータサウンドシリーズ最初期モデルのうちの最上位機種。ヤマハMK-100:1983年発売。音色の簡単な合成が可能。特にトレモロをかけたときのオルガンの音色が秀逸。カシオSK-1:1986年発売。サンプリング機能付。MEWはこのサンプリングの裏技もいくつか開発した。カシオVA-10:1990?年発売。ヴォコーダー機能付。ヒューマンボイスの音色も秀逸。
5)PS-3は8音ポリフォニック仕様だが、減衰系の音色を選び、あえて左手で7つの鍵盤を押しっ放しにしてしまうことによって、右手でメロディを弾くと、音が移ったときに前の音が残らずモノフォニックシンセのように聴こえる。特にビブラフォンの音色を選択したときに効果的。
6)オートリズムをオンにし、しかし4種類から選べるリズムをどれも選択しないことによって、鍵盤から手を離してもオートベースコードをホールド(鳴りっ放しに)することができる。リズムの種類を選択するボタンをどれも最後までカチッと押し込まず、軽く押すことによって浮かせてしまうのだ。バネを使った機械式ボタンだからこそできる技。
7)PS-3は、ACアダプタまたは単2乾電池6本で駆動するが、電池がなくなってくると、まず音量が下がり始めるとともに、音色もかすれたようになって歪み始める。この音色の汚れ具合がなかなか迫力があってよいのだ。YMOウインターライブ「コズミックサーフィン」での坂本ソロの歪み具合を彷彿させる。確か最後は音程もあやふやになってきた記憶がある。微妙に音程が下がるとか安定しないとかではなく、鍵盤を押しっ放しにすると途中でまったく別の音程に変わってしまうのだ。この「電池がなくなってきたPS-3の音」は、即興で適当に弾いた30分ほどの演奏をカセットテープに録音してあるはず。
8)PS-3のチューニングつまみは内部にあって、通常の使用方法の範囲ではチューニングはできない。
9)Twitter、2012/07/01。
10)Twitter、2012/07/01。
11)「当時の細野は「感じたことを『即座に』音楽として発する」という即興性を志向しており、本作でも、限られた時間での作曲やプログラミングによる作品がある」(wikipedia「コインシデンタル・ミュージック」より)「細野は当時、映画『銀河鉄道の夜』の音楽を担当しており作曲・レコーディングで多忙を極めていた(中略)空いた1日で、シンセサイザーとサンプリング・マシンで全13曲が即興的に作られ、マルチトラック録音によるトラックダウンの過程を省くため、ステレオ2トラックでダイレクトに録音された」(wikipedia「エンドレス・トーキング」)。
12)Twitter、2012/06/26。
13)Twitter、2012/07/07。
14)Mac OS Xではファイルに色を付ける機能があり、無色/レッド/オレンジ/イエロー/グリーン/ブルー/パープル/グレイから選択できる。
MODULATION GYM
2012年9月17日(月曜日祝)
@galleryAMP
OPEN.START.17:30
DOOR¥1,500(+1D¥500)
夜な夜なマッドサイエンティストのように
自作や改造やサーキットベンディングに
勤しみ製作された奇々怪々な楽器が一同に!
Kaseo
車輪
http://www.facebook.com/pages/Sharin/258165197586222\
アカサカアユミ
http://www.youtube.com/user/sakasakasakas1
Shanaikinkan
http://shanaikinkan.wordpress.com/
http://herniasoundstudio.wordpress.com/
Nunk On Droise
http://www.youtube.com/user/zeni69
PUNSUCA
rallinana New CD-R
1.anal
2.aaa
3.lana
4.naal
5.nalnal
6.subaru
7.nananoise
This is low low low quality. Hahahahahahaha!!!
映画好きな人たちと一時期、話していて私、「もてばいい」というセリフをよく口走っていました。ストーリーや整合性も、もたせる技のひとつ。女優の顔やしぐさも、ロケーションも、撮り方も、編集も、もちろん音とのシンクロ(あわす場合/あわさぬ場合)も。いろんなものが現れては消える「山あり谷あり」のなかで90分なら90分、要するに、私たちがドキドキできればいい。ここではないどこかに、行っていられればOK。
もたせるための方法は、いまや、古典的なものから現代的なものまで様々。そんなのありか、というようなものまで含めて(P.グリーナウェイ「数に溺れて」では画面のどこかに数が現れ、つねにカウンティングが続けられていました)方法は方法。従来、中心的に考えられていた物語や感動に頼らずとも、いまや私たちは盛り上がることができる。いやむしろ、手あかにまみれてしまった従来の「物語」や「感動」への不信感こそが、一部の人たちを新しい方法へと向かわせたのではなかったか。
そんなものに頼らずとも、もつのだ、とばかりに Kaseoさんの『P.S.S.』もまた、音楽アルバムとはいえメロディらしいメロディも、構成らしい構成もなく(「ランダム/シャフル再生推奨」だそうで)鳴り続ける。これ、ノイズ・インプロヴィゼーションという分野になるのでしょうか?
もちいられた方法は、「サーキットベンディング改造した YAMAHA PSS-102の音源のみを使用」「レコーダーを回しっぱなしの状態でPSS-102の音を録り、面白い展開部分だけを抜き出し」「何も足さない、何も引かない」「ひたすらシャッターチャンスを待つ動物写真家のような感じ」だそうで。まさに現代的。
インプロヴィゼーションとはいえ、これ、なるほど、演奏している当事者は機械。というところで普通は、退屈になりそうなもの。なんだけど違うんだな、これが。意外なことに。
方法/コンセプトはおもしろいけど、作品としてどうなの? というような「現代」モノが、とくに私のような門外漢の俗耳にとって、多いのも事実。要するに、もたない。こちらが。つまり、これ作品のせいじゃなく聴き手の問題といってしまえば、それまでなんですが。しかし、私が作品つくるときもそうですが、世の中、たいがいの人は「門外漢」なワケで。ポップを目指す場合、方法と同時にやはり音楽そのものとして、俗耳にとっても、おもしろくあってほしいもの。使えるネタは何でも使いながら。
サーキットベンディングというのが、まず、いいんでしょうね今回。演奏している当事者は機械、とはいえスタート・ボタン押して終わり、あとは仕込まれたプログラムが走るだけというのでは、おそらく退屈。何が起きるかわからないという、いわば「自然」がそこにないことには。自然はなかなか制御できないけれど、しかし、それゆえに豊かでもあり。壊れた回路もまた然り。ムチャクチャやったりもするだけに、こちらも緊張したりホッとしたり、飽きない。それと、センス。
実際、聴いてみるとなかなか、やってくれます機械。すかすかのチープな「ニューウェイヴ」調で、うまく突っ込んできたり、はずしたり。うなってたり、ファンキーだったり。かっこいいなぁと(俗物でスイマセン)時々、思いましたもの。これまでも改造ピ☆チュウだとかゲーム機パンク・ユニット「POKKeT PiSTOLz」だとか、どこか俗物な Kaseoさんのソロ・アルバムだけに私のほうも、もちました。blue曲とorange曲ごちゃ混ぜに聴いていると一枚で何度もおいしい。
David Cunninghamみたいですね、Kaseoさん(と勝手に)!
清水温度/モザイコ
http://www.mozaiko.info/
How to make a CD cover from a single A4 paper
And of course you can decorate it if you want. Or you can decide to print
something on it and then turn it into a cover.
[bEnt or diE?] presents
P.S.S. / Kaseo
released on 7 Jul. 2012
Full Download
#Blue Download / #Orange Download
Liner Notes #1 - 松本伊織/impact disc
Liner Notes #2 - 赤松武子 /Craftwife
Liner Notes #3 - 清水温度/モザイコ
Liner Notes #4 - MEW/TOAPP音楽事務所
You can enjoy more by random / shuffle play.
Blue:
01. PSS_Blue_001
02. PSS_Blue_002
03. PSS_Blue_003
04. PSS_Blue_004
05. PSS_Blue_005
06. PSS_Blue_006
07. PSS_Blue_007
Orange:
01. PSS_Orange_001
02. PSS_Orange_002
03. PSS_Orange_003
04. PSS_Orange_004
05. PSS_Orange_005
06. PSS_Orange_006
07. PSS_Orange_007
08. PSS_Orange_008
09. PSS_Orange_009
10. PSS_Orange_010
Produced by Kaseo
All Recorded, Mixed and Engineered by Kaseo
Kaseoはこれまで、サーキットベンディング関連の作品を、YouTube上の記録動画やライブパフォーマンスとして発表してきた。2011年の早春から約1年間のライブ活動休止中にも、制作の勢いは衰えることなく、新しいムービーがアップロードされ続けていた。そんな彼が「なんとなくまとまったものを作りたい」と思い、模索し始めたのは今年の始めのこと。カシオトーンを改造したり、CDのデータ面にマジックで落書きをして再生するなど、なにか面白い素材はないかと繰り返し実験をしていた。ふと2年前に入手したまま開封していなかった、YAMAHA PSS-102をひっぱり出し、ベンディングしてみたところ良い結果が得られたので、これをモチーフにアルバムを制作することになった。この作品はblueとorangeの二部構成になっており、それらをシャッフルしランダムに再生して聴く事が推奨されている。音源は、ベンディングしたPSS-102が1台のみで、それから発せられる音を何時間も録音しつづけ、それを1曲ずつ抜き出した計17曲が収められている。録音中にはパラメータの変更などの演奏は一切加えてはおらず、つむぎ出されるパターンは、すべてPSS-102が勝手に出力しているというのだから驚きだ。
おそらく意図的に、音色はあまり歪められておらず、サーキットベンディングにありがちなノイジーでパワフルなものというより、楽音に近い。ある音がリズムを刻み始めると、他の音がふっと重なってきたり、急にふっと消えたりする。小さなミュージシャンによる即興のフリージャズを想起させるが、明らかに人為的にはひきだすことのできない構成になっていて、その先の展開を予想する事がまったくできないところが面白い。そして、それを包み込むような機材の端子から発せられる定常的なノイズが、妙に気持ちよいのだ。
つづく。
赤松武子/Craftwife
サーキット・ベンディングとは、電子楽器や音の出る電子おもちゃの回路を改造し、本来出し得なかった音を生み出すという行為だ。ピカルミンを生み出し、日本におけるサーキット・ベンドの第一人者として知られるKaseo氏。もっとも私が最初に氏を見たのは、十数年前の渋谷ラママで「♪私の名前は吸い取る中国人〜」と歌い上げていた姿だ。あまりにもギャップがあるので今もって当惑している。石野卓球のソロを初めて聴いた電気グルーヴ・ファンもこんな心境だったろうか。
そんな氏による新作『P.S.S.』、特に「blue」を聴いた瞬間、頭に思い浮かんだ言葉は“静寂”だった。決して静謐な音楽ではないが、奏でられる電子音すべてが内面に向かっているような印象を受けたからだ。サーキット・ベンディングという外科手術、いや、ブレイン・ハッキングを施された1台のヤマハ・ポータサウンドが叫ぶサウンド。見捨てられたはずのチープな楽器が、手術を経てふたたび生を受けるさまを、この作品はありありと記録している。
もともとKaseo氏は、早熟の中学生宅録ユニット「集団下校」の中心人物としてシーンに登場。日本のインディー・テクノ・ポップの人脈に連なるアーティストであったが、本作では完全にアンダーグラウンドに潜伏したかのような姿を見せている。それでも、この『P.S.S.』はテクノにカテゴライズされる作品であると感じる。つまり、音楽的な反復を基調とした、ミニマルな構造を持っている。とはいえ、そこには明示的なビートがあるわけでもなく、非常にざっくりとした繰り返しがあるだけだ。かといって、サウンドのはっきりとしたレイヤーや展開があるわけではない。粛々と進行していくプレイの中、AからBへ、そしてCへ遷移し、反復というテクノの枠組みから逸脱していく。その様は、ライブなプレイでしか成し得ない。テクノの文法に則って、それを逸脱する独特の世界。たった1台のマシンと向きあった真剣勝負の様子が、ドキュメントとして収められている。
驚くほど内省的なblueと、幾分ポップな要素を含んだorange、どちらもスリリングなのは、あらかじめ決め込んだ打ち込みではないライブ演奏をとらえたものであるため。そして、演奏しているKaseo氏自身にもある部分は予測がつかないからであろう。とはいえ、blueとorangeでは幾分トーンが異なる。ひたすらストイックなblueに対して、orangeでのカラフルな音使いは氏の本来持つポップな要素でかいま見られるようだ。そして、もう一度思い出してほしいのは、blueの無彩からorangeの色彩までもが、たった1台の、壊れかけのマシンから奏でられているということである。音を操り、音に操られる。そんな奏者の表情が、無機質なはずの機械とのやり取りの中から浮かんでくるような気がする。
Kaseo氏自身は“シャッフル再生歓迎”と語っているが、blueとorangeは夕焼けを構成する色彩でもある。この2色が交わった日没の先にあるのは希望か、絶望か。夕景を眺めながらそんなことを考え、シャッフルのボタンを押した。
松本伊織/impact disc
Full Download
razberry / Razzle-Dazzle
オリジナルリリース 2003年11月21日
Kaseoのライフワークとも言えるテクノポップユニットRazzle-Dazzle。新ボーカリストにryoを迎えた渾身の一作。宅録世代の胸をキュンとさせる、用意周到な性犯罪が展開される。真の80年代の姿がここに!
01. try again
02. modern girl
03. cheep thrill
04. heavy smoker
05. ushiro kara onegai
Bonus Track
06. jenny
07. m0d3rN_g1rL
Razzle-Dazzle are ryo and Kaseo
Produced by Kaseo
All Arranged, Recorded, Mixed and Engineered by Kaseo
Guest Musicians:
yonafy (Homosapience Sapiens): E.Guitar on track5
KENNY (Shintera Records): E.Guitar, Chorus, Remastering on track6
Special Thanx:
inco (LITTLE EL NI~NO RECORD) / Hideki Kunishima (Studio Cul de Sac) / Darmok (mt4) / Dorutan / yasuko / yuka … and You.
Full Download
D.I.N. / KATE
オリジナルリリース 2004年7月25日
01 D.I.N. (Dance In Nippon)
02 D.I.N. (Doru In New-York part1)
03 D.I.N. (Daeki Ippai Nantokashite ~Spacy 1)
04 D.I.N. (Doru In New-York part2)
05 D.I.N. (Daeki Ippai Nantokashite ~Spacy 2)
06 D.I.N. (Doru In New-ZeaLand)
07 D.I.N. (Do I Need ?)
08 D.I.N. (Doru In Nagara-River)
09 D.I.N. (Dive Into Net)