DiploとSwitchiによるプロジェクトから始まったMajor Lazer、あのAlex Clareをフルバックアップしたり、メンバーが幾度か交代するなどありましての2ndアルバムです。
前作でもエレクトロとレゲエの高度な融合を披露していた彼らですが、今回もその路線はしっかりと踏襲されています。
この手のプロデューサーアルバムの例に漏れることなく、多数のゲストと、多彩なサウンドでアルバムは覆い尽くされており、そこから作品性を見つけることは難しいかもしれません、例えば濃厚なプロテスト・ダブチューンM3”Get Free”の後に、レイヴィーなダブステップ・ブレイクスのM4”Jah No Partial”が来るように流れというものはそこまで重視されていないように感じます。
しかしアルバムとしては凡庸でも、そこに詰められている曲達は華やかで輝きのあるものばかりで埋められており、感覚としてはコンピレーションアルバムのようなお祭り感覚で挑むのが正解でしょう。
そう、そういった肩肘張らなさが彼らの魅力であり、賑わいと落ち着きが同居する唯一無二の世界観を作り出しているのだと思います。
ポスト・ダブステップの鬼才、James Blakeの2ndです。
Wu-TangのRZA、アンビエントの始祖Brian Enoも迎えて制作されたこの作品は、前作にやや欠如していた情緒的なメロディーを補い、彼特有の物鬱げで神経質な歌声、寒々しい暗さを感じるトラック、そしてそれらを塗りつぶすほどの低音は前作のまま、強力にアップデートされた印象を受けます。
一方で取っつきにくさもかなり強くなっており、かく言う私も初聴では困惑してしまったのも事実です。
これはいわば彼が嫌う「ブロステップ」に対しての態度を表面化させているのではないかと思うほど、快楽性を「ポップの範疇の中で」削っていっているのです。
ただ、全く突き放した作品でもなく、曲々に瞬間ごと耳をひきつける音像が浮かんでは消えていくのです、その結果ふと何度か耳を貸したくなり、気がつけば魅力にはまっていく、俗な言い方をすれば「スルメアルバム」になっている作品といえるでしょう。
しかしだからといってこれがスノッブ向けに作られた「芸術作品」かといえば、私はNOと答えます、3分で終わる曲達、あくまでもフロアに映える低音の配置、そしてなによりも都会の情景に照らしあわせた時最も輝きが明確になる、そう、あくまでも「アーバンミュージック」だと主張したいです。
内向的でありながら自信満々な両極性を感じる作品、難易度は高いですが、ベース・ミュージック、クラブミュージックを愛聴しているかたなら一度は聴いておくべきと思います。
Vex’dの相方であるKuedoの2011年作は、今流行まっただ中のトラップを魅力的な味付けで調理した一品になっています。
基本としてドラムマシンを駆使したトラップのスネアロールが特徴的なビートを基礎に置きながらも、そこにブレードランナーのサントラを彷彿とさせる壮大かつ霧がかったシンセサイザーが抒情的なメロディーを奏でていきます。
それらサウンドの相乗効果から生まれてくる、脳の裏を優しく掻いてくる感覚は、往年のIDMにも通じる奇妙さと穏やかさをも感じさせてくれます、さしずめトラップ版のBoards of Canadaといった趣でしょうか。
さて、私が一番後悔していることはリアルタイムでこのアルバムを知れなかったということです、2011年という年はAraabmuzik、Rustie、SBTRKTといったベース・ミュージックの変種ともいえる作品に名作が多かったように思います。
今となっては説明不要でしょうが、アメリカはヒップホップ・スターを多数輩出しているコンプトンからミックステープで名を上げた男のメジャーデビューアルバムです。
このアルバムには大きなストーリーが存在していて、それは「コンプトンで生まれた子供がワルたちとつるみ、ハッパを吸い、酒に溺れ、カツアゲに精を出し、しかしそのうちに今の状況から足を洗い、ラッパーとして名を挙げフッドの希望となる」…これだけを聞くとなんともありふれた内容に感じます、しかし面白いのはこのプロットを内省的、個人的な視点に終始した語り口で紡いでいるというところです、このギャングスタとコンシャスが同居したようなリリック世界観、そして歌も交えつつの変速フロウで語られる個人的な物語は一端の映画並みに聴くものを魅了します。
しかしそれ以上にそれを支える屋台骨たるトラックも聞き逃せません、M9”Swimming Pool”はクラウドラップとトラップの融合を感じさせますし、Drakeとの共演M6”Poetic Justice”はゆるめな陶酔感が心地よく、大先輩Dr.DreとのM12”Compton”ではなぜかJustBlazeがトラックを担当しつつもDreらしさを捉えた熱いマイクリレーにふさわしいトラックを提供してくれています。
最後に、このアルバムはありったけのMAAD Cityへの愛が満ち溢れていると僕は感じます、故郷コンプトンへの思い、リスペクトするべき先人たちとの共演、何よりも本人の歌い口こそ、西海岸のユルさを引き継いでる…そんな気がするからです、そうあの今は亡きNate Doggにも似た雰囲気の…。
実のところ、チャートでM1″Adorn”が目立っていたころ、変な印象のMVばかりが気になって私はあまり期待をしていませんでした。
しかしいざ蓋を開けてみるとこのアルバムは濃密なファンクネスにあふれた大傑作でした。
まず基本的に今流行のEDM路線には一切背を向け、漆黒のファンクネスを満たすことにより、全編が闇夜の色合いで統一されています、そこにはブレはいっさいありません。
ではEDMでないのなら同じく流行モノのオルタナティブR&Bなのか?
たしかに機械的な分類ではそうだとも言えるでしょう、しかし内向的で繊細な印象のあるオルタナティブR&B勢に比べ、こちらの作品はセンシュアルで背徳感漂う雰囲気が濃厚になっており、プリンスなどの後継的な印象すら漂っています。
個人的には近年のR&BだとエロさでThe-Dreamの”Love/Hate”、音像の濃厚さでThe Foregin Exchangeの”Leave it All Behind”を連想させる作品、もっと言うとそれらを足して2で割ったような感覚の作品だと思います。
※以前のレビューが個人的に納得いかなかったので大幅に加筆修正しました 2013/03/21
今や掃いて捨てるほどいるEDMDJ、彼らはたくさんの観客を引き連ねて派手なパフォーマンスと選曲で人々を魅了する存在となっており、今やエレクトロニック・ミュージックの花形になっています。
当然のように彼らの大半は(というよりもEDMに限ったはなしではないのですが)選曲者であると同時に作曲家でもあり、シングルやアルバムを出せば即チャートイン、ゲストも豪華でとてもキャッチーなダンスミュージックを提供してくれています。
ですがその反面、あまりにもキャッチーであるがゆえにアルバムとしての作品性は疎かにされがちな傾向も否めなかったりします。
しかしこのドイツ人DJ、ZEDDによるアルバムはそのEDMアルバムに欠乏している作品的魅力が存分に詰まっている会心の作品となっています。
ではその他大勢のEDMアルバムとこの作品がどう違うのか、それはアルバムにおいてストーリーをもたせていること、決してシングルの寄せ集め状態にならないように適度なエディットを施していること(イントロが4つ打ちだけで2分もかかるなんてことはこのアルバムにはありません)、そしてアルバムの尺をあえて短めにとっていること、これらの工夫においてただ楽しい「だけ」のアルバムとは一線を画した、何度でも聞き返したくなるようなものとなりました。
だからといって難解な作品かというと、決してそうではありません、適所に配置したヴォーカリスト、聞き心地の良い明るいメロディなど、むしろ聞いていて楽しい構成を主軸にすえられており、先述の作品性はそれらに飽きのこない持続性を与えるためのスパイスとして機能しているのです。
僕はこのバランス感覚がトップDJであり、名作曲家としての彼の名声を確固たるものにしているのではないかと感じてします。
さて実際にアルバムを再生してみればわかることですが、M1”Hourglass”にこの作品のすべてが濃縮されているといっても過言ではないでしょう、シングルとして十二分に通用する楽曲でありながらも、曲そのものは非常に短く作られており、曲の中盤からはシングルにもなったM2”Shave it Up”へとドラマ性を持った切り替えが展開されています。
この序盤2曲の流れで引きこまれればあとは最後までアルバムを聞き通しているものと思います。
このあと歌ものが数曲続きアルバム全体のテンションは高まってゆき、中盤以降はインスト曲中心の展開に切り替わり、最後はマイナーコードが印象的なインストM10”Epos”で締めを迎え、最後の最後で”砂時計”をひっくり返す演出で閉じられます。
と、このように、映画的でもあり、同時にDJプレイを聞き終えたあとのような爽快感が同居するこの作品は、EDMでいいアルバムを聞きたいならこの一枚があればいい、とまで言えるものになっていると思います。
むしろEDMに偏見を持っているエレクトロニックファンに聞いて欲しい一枚です、CapsuleやDaft Punk、JusticeにJunkie XLが好きな人なら必ずや引き込まれる部分を持っているとおもいます。
この作品は所謂アンビエントに分類されると思います、しかし、他のアンビエント作品にない強烈な個性が「自身の声をサンプリングし、それをドローンとして使用している」という点にあります。
そのため作品全体から古代ヨーロッパの神秘をまとった雰囲気が発せられており、流して聞くことを主眼に置いてある一般的なアンビエントと比べよりポスト・ロック、エレクトロニカ的な方面へのアプローチが強い作品であると言えます。
前半は声のサンプリングが目立ちますが、後半からは前半においても多少影をのぞかせていた楽器が全面に出てくるようになります、この切り替わりに入るM6”Vow”は濃密なダブ・エフェクトのキャンバスに儚げなピアノ、幽玄的なヴォーカル、重厚なウッドベース、蜃気楼的なピアニカが絡み合いながら病的にミニマルなメロディーを繰り返すという、まるでスティーブ・ライヒを思い起こさせるアルバムの中で出色の出来たるトラックです。
兎にも角にも、癒しと言うよりも、ジャケットどおりの深い森の奥に「引きずられていく」ような音像世界、ヒップホップやベースミュージックなどの洗礼(実はDiploやLuniceとも関わりがあるとか!)をうけた世代のアンビエントは、形容しがたくも、深い味わいを秘めています。
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たまには新譜ばかりでなく、なつかしい名盤も紹介しましょう。
イビザのチルアウトクラブ、Cafe Del Marの出している同名コンピレーションから人気のついたUKのアシッドジャズユニット、A Man Called Adamの1998年作です。
イビザというとリラックスしたトランスのイメージが強いですが、このアルバムはそういう色合いは皆無で、真正面なヒップホップ以降のアシッドジャズそのものといったサウンドを展開しています。
こと大名曲なM12″Estelle”をはじめとした、邪気の一切ない暖かなお風呂に入っているような気持になる曲群は、イビザ島でなくともこの疲れいった日本でも十二分にチルアウトを与えてくれることだと思います、でもきちんとお洒落さや低音の太さなども備えていて、そのあたりたんなるスムースミュージックとは一線を画しています。
本物のチルアウトとは気取ったラウンジでなくとも、帰り道を歩いているときでも、落ち着きをもたらしてくれるものじゃないでしょうか。
今年の総括です。
2012 Year is EDM Year
今年2012年はEDMが最もメジャーフィールドに広まった年ではないでしょうか。
以下の曲がUS,UKをはじめとした世界中のチャートを賑わせました
Avicii – Shilhouetts
Calvin Harris – Feel So Close
David Guetta ft. Sia – Titanium
Porter Robinson – Language
Madeon – Icarus
Zedd – Spectrum
また、非EDM系のアーティストたちもこぞってこれらのスタイルを自分の曲に取り入れたりもしていました
Flo Rida – I Cry
Ne-Yo – Let Me Love You
Chris Brown – Don’t Wake Me Up
…さて、この記事を読まれてる方の中にはこう感じる方も多いのではないでしょうか?
「これってただのエレクトロ・ハウスじゃないの?」
正直に言うと一昔前の「ニュー・レイヴ」のようにこの言葉がメディアによって濫用されているという一面は否めませんし、deadmau5のようにEDMと定義されたアーティスト内部からもいささか否定的にこのムーブメントをとらえている向きがないわけでもないようです、僕自身も音そのものは従来のテクノ・ハウスのなかでポップ寄りの曲群を指しているだけではないのかと思っていたりします。(またEDMという単語はこれ以外にも日本でいうところの「テクノ」に相当するような電子音楽全般を指す意味合いが含まれているところが余計に厄介だったりします)
ですが、言葉の是非は置くとしても、今あげた曲はどれも個人的に名曲ぞろいだと感じますし、今までそういった音楽に触れてこなかった人たちに分かりやすい枠組みを提示するということはやはりそれなりに大事なのではないだろうかと感じる次第でもあります。
日本への影響も欧米諸国には遠く及ばないものの皆無というわけでもなく、AKB48やEXILEも少しEDM風味の曲をリリースしていたりしますし、Perfumeやm-floはこのEDMのくくりに入っていてもおかしくはないように感じます。
なにはともあれ、90年代中盤以来の電子音楽のメインストリーム化は目を見張るものがあり、今後このムーブメントがどのような推移をたどっていくのか、見守っていきたいところではあります。
What the NEXT BASSMUSIC?
EDMと並んでアツい状況が続いているベースミュージック界隈ですが、こちらはダブステップの次を模索する動きが広まっていっているように感じます。
主に流行を見せそうなのはTrapというジャンル、このジャンルを乱暴に解説するならばサウスヒップホップからラップを抜いたようなものと思ってください、そもそもサウス・ヒップホップの快楽の源は低音とシンプルながら巧妙に練られたトラックであったわけですので、この音楽の流行はありうる話じゃないかと感じます。
TNGHT – Buggn’
個人的に注目しているのはMicrofunk(という呼び名でいいのか確証が持てませんが…)というジャンルです、こちらはドラムンベースの派生形ながらより音数が少なく、ビートパターンがヒップホップに近くなっているという特徴があります。
Dub Phizix – Marka
ほかにはFuturestep/Chillstepなるジャンルもありこれも注目に値するでしょう、音としては旧来式のダブステップに雰囲気が近いのですが、よりエレクトロニカやチルアウト的な要素を混ぜ込んでおしゃれで聞きやすいものにしているサウンド…といったところです、ダブステップのポップ化においてはエレクトロ要素を混ぜ込んだブロステップがその筆頭に挙げられますが、これはダブステップのポップ化におけるもう一つの”未来”といえると思います。
Atomique – Never Coming Home ft. Jenna G
ここでは主にUKのクラブミュージックを基本に紹介しましたが、アメリカやドイツ、そして我が国日本からも見逃せない流れは続出していくと思います、来年もよい音楽の年になりますように!
ex.韻踏合組合のトラックメイカーである彼、関西を拠点にユーモアと穏やかさ、そして少量の毒を含んだようなサウンドづくりを特徴としていた彼のソロ作品となります。
日本語のラップと緩やかなトラックで、背伸びしない雰囲気、しかしよいこでもない感覚、やんちゃな大人の等身大といったノリが作品全体を包み込んでいます。
作品的に近いものはスチャダラパーなんでしょうけど、そこらかサブカル臭を抜いて飲み屋のにおいをしみこませたらこういう作品になりそうです(笑)、大傑作とは言えないけれど、この背伸びしない緩やかさとユーモアは人々に愛されうる作品だと思います。